超メモ帳(Web式)@復活

小説書いたり、絵を描いたり、プログラムやったりするブログ。統失プログラマ。


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一冊の本には多くの人生が関わっている。

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今日は図書館行ってきたの。それで本を借りて読んでいるのだけど、色々と思う所があるからそれを書こう。


今読んでいるのは呉智英の「大衆食堂の人々」。60年代の思想などに興味がある。安保闘争とかその頃である。呉智英はその年代の思想家で、現代でも一番分かりやすい文章を書いている。思想家とは言ってもゴリゴリの哲学系の文章ではなくて、エッセイみたいな文体でその頃の雰囲気などを味わうぐらいである。呉智英という人自体が思想の主流からは大きく離れた人で、漫画評論家として知られている。僕は小林よしのりを擁護していたことぐらいしか知らない。また、封建主義者を自称しているようだ。一応僕は、吉本隆明平岡正明呉智英経由で知った。なんというか60年代は大学生がいろんなことを勉強していた時代なんだね。マルクス主義などを常識として勉強していないと馬鹿にされる時代だったようだ。


でも60年代の安保闘争などの思想は現代まで影響を残したのか?というと全然、時間の試練には耐えられなかったと思うね。大げさに革命を起こそうなどと安田講堂乗っ取って大騒ぎしていたけど、現代の思想にまで影響を与えられたかと問うてみた時に、その一時だけのムーブメントだったとしか言えない。今でも活動しているのは革マル派ぐらいだろう。大学時代にちらっと学生自治会と絡んでみた事があるけど、未だに共産主義ばりばりで、参加者だけ熱くて周りには全く伝わっていないって感じだったよ。2010年代で60年代の事を知る機会っていったら村上春樹の「ノルウェイの森」ぐらいじゃないかな?


60年代の人々は大学生時代は大騒ぎしてその後はそれなりにバブルで良い思いしてきたわけでしょ? ロストジェネレーション世代である僕は就職氷河期真っ盛り、阪神大震災、オウム騒ぎ、キレる子供たちという薄暗い世相で青春を生きた。就職活動もきつかったよ。50社ばかりエントリーシートで落とされて、受かった中小企業ははなっから使い潰す気満々。60年代ぐらいが親の世代で話は聞くけど、どう考えても年代別で一番損してるのは僕らの年代である。ロスジェネ以降のゆとり世代さとり世代はそれなりに景気も安定してきた頃だしITが充実してきて娯楽には困らない。年金制度にしても、僕らが65歳ぐらいになるときには確実に崩壊してるんじゃないの? 今のうちに積立て投資信託でもしておかなきゃいけないなと考えている。


それは兎も角、呉智英である。本を読んでみたがそれなりに過酷な人生を送っているようだね。政治犯として留置所に勾留されて、そのなかでロシア語を学ぼうとしていたことや、文学部サークルで馬鹿にされたことなど、その時代ならではの出来事などが面白い。ひたすらにプライドが高い学生ばかりで、そいつら相手にハッタリを噛ましながらどうマウンティングをするとか、貧乏学生が古本屋でいかにして最安値で本を取得するかなどのテクニックが満載である。この人の思想は実用的で分かりやすいから現代まで持つことができたんだなぁと思う。下手に難解な哲学を駆使するよりも、ひたすら周りの面白い(バカな)思想家を挑発することで一定のファンを持つことが出来のだろう。


この本では呉智英以外にもある人物を知ることが出来た。図書館から借りた本なんだけどさ、寄贈本だったのよ。それで寄贈者が知りたくなってネットで調べたら下記にヒットした。


ryukyushimpo.jp


與儀雅康さんという人が沖縄県図書館に寄贈した本だった。唐突な心臓発作で亡くなったらしいけど、本を3500冊寄贈する事で後世に名を残すことが出来たというのも、世の中はよく出来たものなんだなと思う。虎は皮を残し人は名を残す。変に大成功しようとして無駄な努力をしなくても、意外な所で名前が後世に知られることもあるんじゃないかと思う。60年代は革命を起こそうとして多くの有象無象が小難しい哲学を振り回していたのだけど、そんな人達は歴史に名前も残さず消えていった。だけど、図書館に本を寄贈するだけで、新聞に取り上げられてローカルな小規模ながら名を知らしめる事ができる。


僕も、何も残せない人生は嫌なので遺言で蔵書を図書館に寄贈するようにするかね。まぁ、ラノベ本が多数なので図書館では受け付けることは出来ないだろうけど、誰かの手に本が辿り着くのは嬉しいことである。意識せずに手にした一冊の本には、色んな人の人生が関わっているのである。僕は出来るのならば作者として本に関わってみたいなと思うね。現代ではセルフパブリッシングで出版もできるので、なにか本を書いてみるかね。


大衆食堂の人々 (双葉文庫)

大衆食堂の人々 (双葉文庫)

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