塩の街
『図書館戦争』の作者、有川浩のデビュー作。結末部の主人公二人が結び付いた後とか、そのまま図書館戦争の二人の様子の引き写しである。おそらくは作者の持つ原型なのだろう。ライトノベルとしては完全にジャンルエラーだよなこれは。
ストーリーの粗筋は、近未来の東京で人々が塩の柱になる災害が進行。ほとんど人が住まない廃墟の街となったなか、二人の年が離れた男女が出会う人々から、それぞれの持つ物語を聴く。全体の構成としては細切れの感が否めない。後日譚の形で追記してしまったせいであろう。
ラブストーリーである。王道である。読んでいる人が恥ずかしくなるぐらいのハッピーエンドである。
女性受けするのは良く分かる。自衛隊や近未来SFを指向していながらも、女性から見た恋愛関係の機微を描こうとしているんだもの。読後感としてはハーレクインっぽい気がする……。
- 作者: 有川浩
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空の中
有川浩の二作目(? 三作目かも)これもライトノベルに分類するには難しい作品。ジュールベルヌの海底二万マイルとか、古き良きジュプナイルを思い出した。
体裁としてはSF的な作品。航空自衛隊で戦闘機のパイロットをしていた少年が、航空事故で父親を亡くしてしまうところから始まる。
空に棲息する、電波でコミュニケーションを取る高度知的生命体『白鯨』との出会い。
反白鯨団体と行政のせめぎ合い。このあたり図書館戦争の検閲とのやり合いを想起する。図書館戦争でもそうだったけど、有川さんは組織間の陰謀を含んだやりとりの描写がうまい。
SFが好きな人にはお勧め。あと図書館戦争での行政のやりとりが面白いと思った人にもよろしいかと。
- 作者: 有川浩
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悪夢のドライブ
舞台、大阪の十三《じゅうぞう》。
主人公、売れないお笑い芸人とペテン師を目指す女子高生。
全篇で関西弁が駆使される怪作。出てくる人物が全て怪しい。多重人格で元ボクサーの運び屋。元結婚詐欺師で女王様。こてこてのヤクザでありながらも夢はギタリストの若頭(ただし小指は事故で無くした)。
展開も常に想像の斜め上。運び屋に持ち込まれた段ボールを開けてみると中から縛られたハリウッドスターが出てきたり、ヤクザ達を手玉に取った女子高生の前に出てくる敵は元ヘビー級チャンピオンのボクサーだったり。
文体としてはこなれていない感じがするが、何が飛び出してくるか分からないのでこれで正しいのかも。面白かったし。
同じ作者の『ギザギザ家族』も面白いらしい。探してみる。
- 作者: 木下半太
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今読んでるのは村上春樹の「1Q84 book3」。とくダネ!の小倉某などは読んでも意味が分からないと言うけど、純文学にエンタメ系のストーリ展開を求められても困る気がする。特に1Q84は場面描写にこだわっている感が強いので、書いている村上氏本人にしても手綱を取るのが難しかったのではないかという気がする。
とはいえ、ねじまき鳥ほどは向こう側の世界にコミットした感じがしないんだよね。まだ全部読んだわけではないので分からないが。
あと、同時進行で「科学と神秘のあいだ」。疑似科学批判だけど文体が優しいし、不可知のものに対する姿勢が正しいなと立ち読みで思ったので買ってみた。感想は後ほど。
- 作者: 菊池誠
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