- 作者: 辰濃和男
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2007/10/19
- メディア: 新書
- 購入: 6人 クリック: 77回
- この商品を含むブログ (68件) を見る
僕は創作で小説を書いたりするのだが、文章の勉強で参考にしている本がある。上記で紹介している『文章の磨き方』は、夏目漱石から村上春樹、井上靖、よしもとばなな、などの古今の作家たちの文章論を元にして、どのように文章をレベルアップするのかをまとめた本である。
『文章の磨き方』では、38章でそれぞれどのように文章を磨いていくのかをまとめている。僕が気になった章と文章を取り上げていこう。
毎日、書く
「旅行に行って10日ぐらい書かないことはありますけど、そうすると10日分へたになったなと思います。ピアノと一緒なんでしょうね。書くというベーシックな練習は毎日しないといけません」(よしもとばなな)
よしもとばななの文章はふんわりとした、気負わない語り口が特徴です。こういった文章を書くためにどうすればいいのかというと、日々書き続ける事で文章に対する気負いが無くなり、さらりとした文章になっていきます。名文を書くためには煮詰めて考えるのではなく、毎日起きたことを友達に語るように綴る事。毎日の積み重ねが血肉になります。
ブログを書くことは、文章の練習には一番いいのではないかと思います。日記でもいいのですが、誰かに読まれることを意識した方が文章には締りがでます。読まれることを意識した文章を毎日綴っていれば文章力は高まるのでしょう。
借り物でない言葉で書く
「作文の秘訣を一言で言えば、自分にしか書けないことを、だれにでもわかる文章で書くということだけなんですね」(井上靖)
文章はただの文字の羅列ではありません。その文章には書いた人の様々な思いが込められています。作者は自分が感じたことを誰かに伝えたいと思い、文章を書きます。巧拙の違いはあれども、そこには伝えたい思いがあります。どんな人生を生きて、どんな出来事があって、どのように感じたのか? それは千差万別、文章を書く人全てにこれまで生きてきた人生の積み重ねがあります。
だからこそ、上手い文章を真似るだけではなくて、自分自身が表現したいことを素直に表現することがオリジナリティと感動を生みます。
難しい思想とか理論はいらないんです。自分の感じたことを他人に伝わるように書くこと。井上靖はこれができたらノーベル文学賞ものだと言っています。
比喩の工夫をする
比喩には色々な種類があります。
- 直喩。あるものを他の物に直接例える事。「雪のような肌」「動かざること山の如し」など。
- 隠喩。「〜のようだ」「〜のごとし」などの形を用いず、そのものの特徴をほかの物で表現する。「花のかんばせ」「金は力なり」など
- 活喩(擬人法)人でないものを人に見立てて表現する。「海は招く」など。
小説で言うと描写ですね。小説は文章でしか表現できないので比喩を使った描写で読者の想像を膨らませる必要があります。マンガや映画などでは、絵や動画で直接どういう状態なのかを伝えることができますが、小説では読者の想像をそそる事が求められます。
描写というのは、映像作品ではスローモーションを用いた状態です。人物がどういう状況で、何を感じているのかを上から下まで綿密にみつめて描き出す。これができたら読ませる作品を書けます。
まとめ
文章を書くということを趣味にすると、一生ものの退屈しのぎができます。どれだけ汲み上げようとしても尽きない井戸を前にしているようなものです。文章と向き合うというのは自分と向き合うというのと同義です。
漱石はこう言っています。
「一口に文章と云つても、単に字句を連ねると云うことと思つては大きに間違う。文章と云うと、その中に含まれた内容が大切である。或る場合には、その内容に從つて文章の価値が何うにもなるのだ。だから、文章を学ぼうとする人々は、文章を稽古すると同時に、先づ思想を養ふことが大切である。では、その思想を養ふには何うしたら好いかと言へば、実際に触れること、読書することである」
自分が何を思っているのか向き合うこと、文章というのは自分の内面の表れです。美しく飾ることも必要ですが、本当に重要なのはそこにどんな思いを込めるかと言うことだと思います。
以上です。