超メモ帳(Web式)@復活

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林先生の『統合失調症という事実《電子増補版》』を読んだ。

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読んでいるとモヤモヤした気分になる本だ。ありがちな統合失調症の解説本のように治る病気として安心させるのではなく、事実を事実として突きつけて現実を見つめさせられる本である。だがそれは、著者の林公一氏が意図した事であるようだ。

事実とは、その一部を記載しただけでは事実を記載したとは言えない。明るい事実だけを記載するのは、その記載内容自体が正しくても、広い視野からすれば虚偽である。病気とは、明るい面も暗い面もあるのが当然であって、その両面が描かれていなければ病気の事実についての本とは言い難い。明るい面だけを読むほうが気持ちの安寧は得られるであろうが、病気の本とは娯楽のために読むものではない以上、そんな偽りの安寧を求めても仕方あるまい。だから私は『統合失調症という事実』を書いた。一般読者向けに、統合失調症についての明るい事実も暗い事実も分け隔てなく描いた本を書いた。


統合失調症についての本の理想とは —– 『統合失調症という事実 電子増補版』をめぐって | Dr林のこころと脳の相談室


こんな考えで書かれた本だから、統合失調症当事者が読んで希望が持てるような内容は少ない。第3章の無治療では、統合失調症の患者が治療しなければ、人格が荒廃していき引きこもりになったり、被害妄想から殺人未遂に至るケースが取り上げられる。また、第4章 再発では本人の勝手な判断や、家族に止められて薬を止めて再発したケースが取り上げられる。

 

林先生の統合失調症に対する考え方は「薬を一生飲んでいて副作用があっても、薬を飲まないことによっておこり得る悲劇に比べればずっとマシだ」という考えである。実際、それは事実であり統合失調症の断薬は悲劇を巻き起こす。詳しいケースを知りたくば、下記のQ&Aをつまみ読みでもいいから読んで欲しい。

 

Dr林のこころと脳の相談室

 

だが、希望が無いわけではない。この本では精神科Q&Aの悲劇的なケースばかりを取り上げているのではなく、回復した患者の日常の生活も取り上げている。詳しくは、「Case 5-1 公私ともに充実しています 本人の目から」などでは、統合失調症を完全寛解して無事働けるようになった人の手紙を取り上げている。また、定形型抗精神薬から非定形抗精神薬、そして『クロザピン』を改良した第三世代の抗精神薬への研究なども記述されている。絶望ばかりではないのだ。

 

この本は当事者よりも、健常者に是非読んでもらいたい。奇矯な言動、支離滅裂な思考、そんな統合失調症を発症すると、周りの家族などは病院に連れて行くまでに相当に精神をすり減らす。だが、それは統合失調症の多数の症例から見た場合当たり前の事だったりするのだ。周りが感情的になって治療が遅れ、人生を台無しにするよりは、早く精神科を受診させて、一刻も早く投薬治療を開始するほうが治りも早いのである。また、統合失調症は100人に一人という多くの人が患うのに、未だ偏見が色濃い病気でもある。統合失調症の事実を広く世間に知ってもらって、治療をすれば普通の人並みに生活できるということを多くの人に知ってもらいたい。

 

kindle版の方が安くて、内容も増補されているのでこちらのほうがいいだろう。

 

 

P.S. はてなブログProに入っている訳でもないから、本気入れて本の紹介してもアフィリエイトで一銭も入りません。さっさとProに入って一儲けしたいです(^p^)

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