超メモ帳(Web式)@復活

小説書いたり、絵を描いたり、プログラムやったりするブログ。統失プログラマ。


SPONSORED LINK

「書ける人になる 魂の文章術」(ナタリー・ゴールドバーグ著)を読了した。

f:id:yuki_2021:20200909223107p:plain

「書ける人になる 魂の文章術」(ナタリー・ゴールドバーグ著)を読了した。


最近、小説執筆のためにいろんな文章読本を読んでいるんだけど、「書ける人になる 魂の文章術」(ナタリー・ゴールドバーグ著)を読了したので、その感想文でも書いておこう。


まず、これは、文法とか初めて小説を書く人にどんな風に書けば良いのか教えてくれるようなノウハウ本じゃない。エッセイや小説の書き方を教えてくれる文章読本でもない。じゃあ、何の本なのか?と問われると、書いて書いて書き倒して自分の内面を全部さらけ出して、本当の自分を知るためのきっかけとなる起爆剤の様な本だ。


この本で紹介されている方法はノンストップライティングに近い。毎日、時間制限をして思いついたありとあらゆる事を書き綴るというのを「文章修行」として勧めている。

文章修行の基本は、制限時間を決めて行なう練習だ。十分でも二十分でも一時間でもいい。それはあなた次第。最初は短い時間から始めて、一週間したら時間を延ばそうという人もいるだろうし、最初から思い切って一時間とる人もいるだろう。時間の長さはたいして問題じゃない。たいせつなのは、何分、何時間であれ、自分が決めた練習時間のあいだは完全に没頭することだ。

 次に、書く際のルールを挙げよう。

1.手を動かしつづける(手をとめて書いた文章を読み返さないこと。時間の無駄だし、なによりもそれは書く行為をコントロールすることになるからだ)。
2.書いたものを消さない(それでは書きながら編集していることになる。たとえ自分の文章が不本意なものでも、そのままにしておく)。
3.綴りや、句読点、文法などを気にしない(文章のレイアウトも気にする必要はない)。
4.コントロールをゆるめる。
5.考えない。論理的にならない。
6.急所を攻める(書いている最中に、むき出しのなにかこわいものが心に浮かんできたら、まっすぐそれに飛びつくこと。そこにはきっとエネルギーがたくさん潜んでいる)。

ナタリー・ゴールドバーグ. 書けるひとになる! ――魂の文章術 (扶桑社BOOKS) (Kindle の位置No.257-263). 株式会社 扶桑社. Kindle 版.


こりゃまぁ、完璧にノンストップライティングですね。この著者は、禅の修行をする事でこの書き方をするようになったのだという。


ノンストップライティングを真面目にやった事がある人なら分かると思うけど、あれは心の内面を覗き込んで恐ろしいものを呼び込んでしまう事もある。文章修行は、そういう事に対しても恐れず、嘘を付かず、真正面から自分の内心に向き合うのである。文章を書く事にうまくなるようなコツとかかっこいい文章の書き方なんて全部小賢しい事だ。本当に必要な事は自分の本心をきっちり見据えてありのままを書く事だ。


僕は小説も書くのだけれど、小説を書くためにいろんな文章読本などを読み漁ってノウハウを集めていた。で、実際にそういうノウハウを使って書いたりするのだけど、そういう作品は小奇麗であっても何かものたりない。自分が何を書きたいのかちゃんと分かってないのに形だけで作品を仕上げても、「仏作って魂入れず」というか、読んだ人に訴えかけるものがないつまらないものが出来る。


この辺り、僕も最近気が付いてきたことだけど、小説などを書こうと思えばある程度の型みたいなものもあったりするけど、本当に必要な事は自分が書きたいシーンを細かなディティールまではっきりさせる事である。小説が、映画や漫画などの他の媒体と異なる事は、心象風景を描き出す事を中心としたものであるという事だ。その出来事に出会った時にどんな気温だったか? 壁に貼られている張り紙はなにか? 空の青さはどうか? ぼんやりと気になっている事はなにか? そういう事をひっくるめて全部表現して読んだ人に感情を追体験させることができるのが小説の強みだ。


文章を書くためには自分をはっきりと知っていないといけない。文章書きだったら分かるかもしれないけど、自分の本心というのは書いてみないと分からない。これは僕の場合の話だけど、物語を描き出そうとおもうならば、脳に焼け付いているどうしても書き出さないと一生後悔しそうなあのシーンを、自分の手で書き出すことで追体験するために小説を書くのである。これは自分の中の心象風景を表現しないと死ぬほど後悔することになるのでやってることなので、他人の評価は二の次だったりする。


この本では物書きというのは次の様なものだと書かれている。

物書き仲間のほとんどが書くことにこだわっているのを私は知っている。そのこだわりはチョコレートと同じ働きをする。なにをしていようと、いつもなにかを書いていなければいけないと物書きは思っている。それはけっして楽しいことじゃない。芸術家の人生が楽だなんてとんでもない。作品をつくっていないかぎり、けっして自由にはなれない。

ナタリー・ゴールドバーグ. 書けるひとになる! ――魂の文章術 (扶桑社BOOKS) (Kindle の位置No.803-806). 株式会社 扶桑社. Kindle 版.


僕は、表現者というのは生き様だと思っていて次のようなエントリーを書いた。


www.ituki-yu2.net

表現者というのは、社会的に評価された人だけを指すのではないというのは僕の持論だ。表現したい内面の真理に忠実に生きて、あらゆる手段で表現し続けた人は全て表現者だ。手段はイラスト、小説、プログラミングでもブログでも構わない。何かを書き記して、傷跡を残すことに意味がある。無論、それが世間に認められる事は幸福ではあるが絶対必要かといわれたらそうではない。無名で死んでいった表現者達にも意味はある。


だからヘンリー・ダーガーにも共感するのだ。内面の物語だけを人生の拠り所として、それを表現することだけに尽くした人生だった。彼は幸福とは程遠い生活を送っていた様だが、多分、その人生は満たされたものだった想像できる。物語を表現するというのはそれだけで幸せな事なのだ。誰にも読まれない物語でも自分自身で読んでいて楽しい。書いた作品を一番熱心に読むのは自分自身なのだ。


だから僕は偉そうに言うよ。幸せになりたかったら表現者たれ。手を動かして傷跡を刻め。無名の作者でも誰かに辿り着くことが出来る可能性を捨ててはいけない。技術を学び、バリエーションを増やし、鮮やかに墨痕を残せ。見たものを楽しませる作品作りを忘れるな。でも、自分を捨ててはいけない。魂がこもっていない作品に意味はない。外形だけ美しい作品をなぞっても、自分の我が入っていなければそれは表現ではない。


僕はこう思っているから、この作者の書いていることにはすごく共感できた。僕みたいな表現者を目指している人を勇気づける言葉がいっぱい詰まってる良い本でした。


書けるひとになる! 魂の文章術

書けるひとになる! 魂の文章術

プライバシーポリシー免責事項