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『文章の書き方』(辰野和夫著)読了。


文章の書き方 (岩波新書)

文章の書き方 (岩波新書)


週末は露天の出店で焼き鳥を買って、コンビニで買ったビールとともに一人で祝宴を上げることにしている。仕事してると日常が単調だから、こんな風にモチベーションを上げるしか無いのです。今日はamazonで買った本が届いていたのでビールをちびちびとやりつつ、早速読んだ。


辰野和夫さんの『文章の磨き方』は僕の座右の書です。辞書類と一緒にすぐ手の届く場所に置いてある。文章の練習法が章ごとに書かれているので、日常の物書きで思う所があるときにはすぐに参照している。その前著の『文章の書き方』も評判が良かったので購入してみた。


内容は古いんですが、やっぱり良いですね。『文章の磨き方』でもそうだったんですが、この本でもいろんな作家の文章を引き合いに出してきて、文章に向き合うときの態度などを述べていくスタイルです。引用文が滋養が高くて良い風味を出しているような文章ばかりなのですよ。なおかつ、辰野さんは天声人語を書いてた新聞記者の方なので解説も簡潔さやバランスが取れた文章です。やっぱプロは違うなと思いつつ読んでます。


僕はプロットは書けるけど、表現や描写が苦手なのですね。とある小説家志望のコミュニティで作品を批評してもらったことがあるのですが、描写が薄っぺらいと言われました。確かに描写しようとすると形容詞の羅列になってしまう癖があるのです。僕の悩みに参考になりそうな所を探したので引用します。

紋切型の表現を避けるためには、紋切型でない文章を数多くゆっくりと読むことです。読んで、いいと思った表現をそのまま真似るのはいけません。学ぶべきは、心です。こんな表現はどうでしょう。


「入江うちが淀んでも凪いでいても、ここに来て足を一歩入江そとの方にふみ出すと、風が耳の裏を鳴って通り、身体の中に飼っている鳩が自由なはばたきをあげて飛び立つ思いをした。沖合の波は白く穂立ち、かもめがゆるく舞っていた。そして入江は海峡に大きく口を開き、その海峡越しに、はるか向こうの島の山容、海岸沿いの県道の赤い崖崩れなどが、痛いようにこちらの気持ちに手を差し伸べてきた」(島尾敏雄『出孤島記』)


「渚に崩れ落ちる波がしらが月明かりに白く見えていた。黒く荒涼とした砂鉄の浜だが、今夜は貝殻が星屑のように輝いていて、打ち揚げられた流木に足を取られずに済みそうである」(三浦哲郎『夜の悲しみ』)


「唐本幸代がぼくに好意を持っているのはどうやら確からしいけれども、それがどの程度の好意なのかは、やっぱりよく解らなかった。『恋』という言葉が、便所蝿のようにわんわん耳の周りを飛び回っていたが、どうもそこまでは行っていないように思えた」(芦原すなお青春デンデケデケデケ』)


「天を、星が動いてゆく音が耳の奥に聞こえてきそうなぐらいに、しんとしている孤独な夜中だ。かすかすの心に、コップ1ぱいの水がしみてゆく。少し寒く、スリッパをはいた素足がふるえた」(吉本ばなな『キッチン』)


文章の書き方 p209-210


こんな風にいい感じの文章がいっぱい引用されています。なんというか、読んでいてつくづく自分が勉強不足だなと思わされました。僕みたいな描写力に困っている人には、気に入った表現の抜き書きが推奨されているので頑張って行わないといけないですね。


表現にこだわる物書き志願者は必読だと思いますね。僕はワナビなので勉強になりました。

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