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「失敗の本質」(戸部 良一、ほか著)を読了した。

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「失敗の本質」(戸部 良一、ほか著)を読了した。


さて、ちょっと前からオーディオブックで「失敗の本質」(戸部 良一、ほか著)を読んでいた。



最近、ちょっと大東亜戦争の戦記とか興味が起きてぼちぼち関連書籍なんかを読んでいるんですよ。前に読んでいたのは「大本営参謀の情報戦記」(堀栄三著)を読んでいたんですよ。なんというか、どう考えても勝てない戦争に無理やり国家を総動員させていく様な時代の流れとか、実際に究極的な状況に置かれた時の組織の行動原理みたいなものからは学ぶ事が多いんじゃないか?と思って、軍記とか色々と調べている感じ。


www.ituki-yu2.net


なんか、「失敗の本質」は日本軍の大東亜戦争での敗北の記録を読み解くことで日本的組織の弱点なんかを分析しよう!みたいな本でしたね。一応、一通り読み終えてみましたけど、すごく内容が固い硬派な本でした。難しすぎて細かな点をあんまり覚えていない感じなんですよね。まぁなんとなく全体像みたいのはおぼろげに記憶はできてますけど、これを細かく説明しろと言われてもあんまりできそうにない。まー、印象に残った所をぼちぼちと書き抜いて感想文を仕上げてしまおう。


この本ではノモンハン事件からレイテ海戦、インパール作戦沖縄戦など、日本軍が敗戦した作戦を分析することで日本型組織の特徴などを分析した本でした。この本を書いているのは歴史学者というよりは経営学の研究会が集まって日本軍の行動原理から日本型組織を研究しよう、という様な思惑で書かれている本である。


3つのパートに別れているんですけど、第1パートは実際の戦争の記録を詳細に綴っているパート。僕がこの中で一番印象に残っていた戦記はインパール作戦でしたね。


インパール作戦というのは日本の敗戦が濃厚になってきて一発逆転を狙ってビルマ侵攻を狙った作戦である。この作戦自体、地形的に侵攻するには「ひよどり越え」みたいな形で危険性が高い割には成功する可能性が無くて誰もが反対している作戦だった。ところが、この無理筋の作戦を個人的な思惑で無理やり推し進めた司令官がいた。牟田口廉也である。


ja.wikipedia.org


ちょっと日本軍の歴史などを知っている人には有名な人かもしれない。史上最強徹頭徹尾超弩級のレッテルがつくぐらいの愚将である。日本軍の陸軍悪玉論が出るときにはまっさきに槍玉に上がる人物である。部下たちの残されている日記では「鬼畜牟田口」「無茶口」と罵られていた。


牟田口は始めインパール作戦の決行には消極的で、明確に返事をせずに有耶無耶にしてもみ消そうとしていた。しかし、牟田口は日中戦争開戦のきっかけとなった盧溝橋事件で指揮を取ってた事を思い出し、この大東亜戦争を勝利に導くのが自分の運命なのだと思い込んだ。そこから意見を180度転換して、個人的な思惑だけで周りの参謀たちが全員不可能と反対しているインパール作戦を押し切った。


日本軍にとって悲惨だった事だったのは、どう考えても死地に赴くこの作戦を分かっていながらも誰も止めることができなかった事である。一応、上司は居たようなのだが全く止めもせず、逆に「牟田口の言うことだからやらせてやれ」と戦略的な合理性よりも管理職同士の人間関係の方を気にして諌めなかった。また、牟田口は覚悟して上訴してくる部下の参謀たちを次々と首を飛ばして、とうとう不可能と言われているインパール作戦を決行した。


当然の如く大苦戦に陥って、「白骨街道」と言われるような死屍累々で補給線もおぼつかず病死や戦死が続出する戦況になった。インパール作戦が敗色濃厚になった時、士官たちを集めて訓示を行う。

皇軍は食う物がなくても戦いをしなければならないのだ。兵器がない、やれ弾丸がない、食う物がないなどは戦いを放棄する理由にならぬ。弾丸がなかったら銃剣があるじゃないか。銃剣がなくなれば、腕でいくんじゃ。腕もなくなったら足で蹴れ。足もやられたら口で噛みついて行け。日本男子には大和魂があるということを忘れちゃいかん。日本は神州である。神々が守って・・・・


あまりにも長すぎる訓示で栄養失調に陥っている士官たちは次々と倒れていった。彼らにとって悲劇だったのは東条英機もこの作戦が成功すると信じてしまってたため、やめるにやめられず撤退が許されない状況だったので被害を深めてしまったのである。結果的にこの作戦の失敗で日本の敗戦は更に決定的になった。


牟田口は最初、この作戦失敗を反省はしていたようだが、やがて気を取り直して部下に責任転嫁をする著述に精を出し始めた。その葬式ではインパール作戦の失敗は部下のせいというパンフレットを配ったという。


まぁ、牟田口廉也のことばかり記述したけど、日本軍は下士官以下の兵士の練度はおそろしく高かったらしい。日本軍というのは精神力重視で、米軍の鉄量に大して実際に根性の突撃だけで押し切れる様な場面があったという。しかしながら、上司の司令官クラスは陸軍大学からのキャリア組で人脈重視の組織体制がなされており、その作戦も実効性がない古臭い教条的な戦略の暗記で評価されていたということだ。現場は優秀なのだが、その指揮をとる司令システムがまったくダメダメなのである。日本軍は上司のムチャブリを現場が柔軟に対応するという現代にも通じる仕組みである。事件は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きてるんだ!ってやつである。その他にも、組織として失敗を学習するシステムがなかったりなど組織を環境に上手く適応させる事ができなかったのが日本軍の敗因である。


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