超メモ帳(Web式)@復活

小説書いたり、絵を描いたり、プログラムやったりするブログ。統失プログラマ。


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「ハンチバック」(市川沙央著)を読んだ。

「ハンチバック」(市川沙央著)を読んだ。


週末金曜日であるな。世間は公休日で休みであるが、弊社は普通に仕事である。9月に仕事の納期もあることであるし、修羅場であるよ。


僕はメンタルの調子は不調。今週末は土曜日は自宅で適当にNetflixで映画を見たりとかしながらニュースレターや週報を書いて、日曜日はサウナにでも行ってこようかと思う。僕の場合、サウナでダラダラと時間を過ごせばひとまず直近のストレスによる神経の不調は落ち着いてくるので、こういうコーピングで対応してまいろうかと思う。


さて、何を書くか。最近、芥川賞で話題になっていた「ハンチバック」を読了した。たしかにありゃすごい作品であると思う。重度の身体障害者である作者が、あそこまでいろんな事を赤裸々に書いちゃってる小説というのは話題性の上でも芥川賞を取っちゃうような作品であるなと感じた。無論、作品としての完成度も高くて、ハラハラドキドキしながら読み進めた。


でもまぁ、どうもああいう弱者男性のルサンチマンであるとか、障害者の性のことなんかをズバズバと描き抜いちゃう作品というのは、僕は傾向的には苦手なのよ。「ハンチバック」の場合にはそれを完成された物語の形にまで昇華してあったから安心して読めたであるけど、自意識をきちんと形も与えずにほっぽり出すという風な作品に関しては共感性羞恥心を感じちゃってなんかだめ。


どうも、僕は読書傾向にしても自分で作る作品にしてもそうなのだけど、徹底したエンターテイメント主義者であるし絶対ハッピーエンド至上主義者でもある。田山花袋の「蒲団」のような自然主義文学の純文学に関しては、読みはするけど読後は作者に祟られたような嫌な気分になってくるであるし、元々持っていてなんとか矯正した人間嫌いが再発しそうになってくる。


人間の性向に対する考え方に関しては、「性善説」と「性悪説」があるけれども、僕はなにかプロジェクトを立てたりして仕事を実行していくときは「性悪説」で考えるけども、人間自体の存在であるとかその持っている本質については「性善説」を採用している。


人間というのは確かにずるくてだらしなくて、意図的にルールで縛らないと自己破滅的な行動もとるような生き物であるが、自分自身の思考でもって文化的なニッチ構築をできる。自分自身の弱さを認めた上で、それを乗り越えるための自己規範を打ち立てて成果を残した偉人たちというのも確かにいる。人類それ自体の文明の進歩というのも、失敗とその反省で困難を乗り越えて成長をしてきたというのは世界史を学んでいればわかる。


人間の二面性を描いた文学というのは昔からさまざまあるものでね、僕は人間というのが一方的に悪いものであるという露悪的な表現というのは好まない。僕は太宰治はその破滅的な生き方から嫌いではあるが、作品は好きだ。「斜陽」の中では、貧困において破滅していこうとする中でもお互いを思い合って守っていこうみたいな心情も描く。


村上春樹の「ノルウェイの森」なんかも孤独に生きながらも、深いところでのコミットメントを求めるような作品であったと思う。村上さんの好む主題というのは、孤独でありながらも井戸の底のような深いところでつながりができていくという風な物語であり、僕は「ねじまき鳥クロニクル」の中で牛河が言っていた「人は島嶼にあらず」という言葉に村上さんが表現したいものが詰まってると思うね。


人間というのは心の中にいくつものベクトルを持っているものであるし、自己の葛藤や他人とのぶつかり合いの中でそれらのベクトルを対決させることが物語の主題になるのはよくあるもんだと思う。今回僕が読んだ「ハンチバック」も重度の障がい者である主人公がハンデキャップを背負いながらも通信大学で学んだり、自力で稼いだわずかなお金を寄付したり、プライドを持って生きていこうとしていた。その彼女の信念をへし折ろうとする弱者男性のルサンチマンに打ち勝つまでのストーリーだ。


僕自身、程度はそこまででもないけど精神障がい者であるけど、「ハンチバック」を読んでいてここまで書いてもいいものなのか! と驚かされた。障がい者というのは世間からつまはじきにされたマイノリティとしてのルサンチマンのようなものを抱えているものであるし、実際に障がいにより生産性がないので社会のお荷物ではある。


しかし、「ハンチバック」の彼女は、健常者ではあるけど世間を恨んでいる弱者男性のルサンチマンに命を賭けて勝負をして勝利した。重度の身体障がい者であるけど信念を持っているのであれは困難に打ち勝つ事もできるとエールを送られた思いであった。


それと「ハンチバック」は比較的短い作品であったので、語りたい主題というのも見えやすかった気がするね。どうも、障がい者であっても前向きに生きる意思みたいなものを僕は受け取ったので、僕の今抱えてる悩みにはピッタリの物語だったかなと思う。


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